食 −HdN.−


蕎麦と

はい。新年最初の食は“蕎麦”です。漢字の蕎麦。以前にもそば(こちらは平仮名ですが)については云々・・・と書いてますが、まあそれは置いといて。

さて、今回のお店、根っからの蕎麦っ食いである我が父が、結構最近ではありますが、上京の度に行くようになったお店です。「坐忘」と書いて「ざぼう」と読みます、読むそうです。
このお店、とにかくもうなんか通好みなお店なんです。
まずはそのお店のたたずまい。もう見た目からもういわゆる良い感じ。とても落ち着いた、隠れ家のような、そんな感じ。んで、低めの戸を引いてちょっと屈んで中に入ると、またもうそれはそれはとても落ち着いた雰囲気。へたすると来る場所間違ったかなみたいなそれぐらい落ち着いた感じ。なんとも説明できてないところに、表現できないよさを感じてください。
で、いよいよ蕎麦の話に入りますが、、まずは温かい蕎麦茶を一杯。良い香りの蕎麦茶が、これから食べる蕎麦への気持ちをよりいっそう膨らませます。蕎麦茶を飲みながら、お品書きを見るわけです。目移りしますよ、そりゃ。この寒い季節やと、温かい蕎麦に惹かれます。でも、そこはまあお決まりのようにせいろ蕎麦あるいは田舎蕎麦を選びます。
蕎麦茶の続きをいただきながら、蕎麦を待ちます。蕎麦茶がなくなって、ちょっと我慢できなくなってきたかなーってところで、はい、待望の蕎麦が登場です。もうね、鼻が鳴ってますよ、そのころには。香りを味わってから一気に蕎麦を啜る。したらさらにその香りが広がる。せいろだとスルっとフワっといけます。田舎だとズルっとバっといきます。そんなのを数回繰り返して、もう終わり。満足しつつももの足りない。贅沢です。でも蕎麦湯があります。蕎麦湯でもう一度香りとお汁を味わいます。
そうして蕎麦湯を味わい終えて、ふーっと一息ついてると、嬉しい不意打ちがあります。おいしい不意打ちが。これはまあ、お店に行って直接確かめていただくとして、その不意打ちを味わいつつ、それとともに出してくれる蕎麦茶で食べ終わった蕎麦への気持ちを心に治めます。はい。
そして、次はいつにしようかなあとか思いながら、低い戸をくぐり、店を跡にするわけです。

こんな感じでいかがでしょうか?まあね、とにかく行きましょう。美味いですから。値段も特に突き抜けて高いわけでもないですし、あの美味さならむしろ安いぐらいでしょう。蕎麦以外もね、素晴らしいです。穴子の天ぷらはもう素敵です。天つゆでも良いですが俺は塩が良いと思います。あ、ちゃんと蕎麦つゆと天つゆとを別々に出してくれます。だから蕎麦にいらん油は付かないわけです。穴子の天ぷらには骨煎餅もつきます。これもサクサクっといけます。海老天はかき揚げです。海老たっぷりでした(俺が食ったわけではないですが、海老好きにはもうたまらんぐらいたっぷり入ってました)。
ホンマ、こんな良い蕎麦屋が近くにあるなんて幸せ。
『蕎麦 坐忘(東京都 八王子市 千人町)』【蕎麦,穴子天】
参考URL:http://www.mmjp.or.jp/zabo/
[平成16年1月24日(土)]




ラーメンウィーク

ネオユニヴァースが三冠達成を逃した翌日からシンボリクリスエスが天皇賞(秋)を連覇した今日までの一週間を、自分勝手にラーメンウィークと名付け、ラーメン漬けの一週間にしてみました。
結局のところ、月、火、(水、)木、日とラーメンを食べました。まあそれらの店とその味をここに示して(、それ以外のも示してますが)、我が地元西八王子のオススメラーメン屋を挙げておこうというものです。以前書いてたもののリメイクでもありますが、内容はだいぶ変わってるので、新しい食としてます。

月曜日が『星のすみか』。
このお店はね、実は一度姿を消したお店なんです。平成15年の3月か4月ぐらいまで、地元のちっさい駅ビルの中の一店舗として営業してました。駅が近いせいもあってか、まあ味も良いんですが、ひっきりなしにお客さんが入ってたんで、繁盛してたはずなんです。しかししかし、仕事で帰りが遅く、お店にいけない日々が続いてて、気が付いたらお店のシャッターが下りっぱなし。おいおいどないしたんやー、なんて思ってたわけです。で、ちょっとたったらまた知らんまに天丼の『てんや』になってた。これはもうショックですよ。
でも、3〜4ヶ月ぐらい過ぎたかぐらい、7月か8月やったと思いますが、駅から家に帰る道をちょっと遠回りな道にして歩いてみたら、あらビックリ、何故にこんなところにお店が!ってな具合で新しい店舗ができてた(俺の主観では復活してた)わけですね。
というわけで、ここのオススメのラーメンの紹介。ここは2種類あります。
まずは「半チャーシュー(醤油)」。ここのスープはね、沢山の野菜と魚系と肉系のミックスなスープです。正直な話そんなにビシッと言い当てられるほどすべての材料はわからないです。しいたけとか昆布とかとにかく色んな味がするので、ダシの味はしっかりしてます。で、凄いのが化学調味料とか使ってないことです。まあ、昨今のラーメンブームでは当たり前な感もあるかもしれませんが、でもこれってやっぱり凄いことです。あ、別に化学調味料が駄目というわけではないです。やっぱり食べもんって旨味があった方が美味いですし、それが手軽に手に入るんやから願ったり叶ったりです。でもやっぱりやっぱり、そこをあえてそれに手を出さずに努力を重ねてゲットするというあたりが良いんですね。作り手の努力が客に伝わります。スープが細めの麺に絡んで、ずぞぞぞぞぞってな感じで食べられる。そしてチャーシューもね、凄くいい。トロケルチャーシューと銘打たれてるんですが、これホンマ、具としてラーメンの上にのってる時点で、その温度でもうすでにトロッとなってるわけですよ。それをお箸でつかむとどうしようもないぐらいトロッと崩れる。なのでレンゲとお箸で上手に使ってトロケルのを口に運ぶ。それが口のなかでもう一度トロケル。でも肉の部分はちゃんと食い応えがある。もう、凄くいい。あ、このお店、チャーシューを何枚入れるかを選べます。半チャーシューの半というのは、チャーシュー2枚という意味です。普通のチャーシューだと4枚です。3枚とか5枚とかできるかは知らんけど、多分やってくれるんじゃないんかなあと思います。当然料金が変わってくるとは思いますけど。
もうひとつが「ゴマみそネギチャーシュー」。ゴマとみその香りが凄くいい感じで、ドロッと濃厚なスープのラーメンです。それに麺がこちらは醤油と違ってちょっと太め。スープが濃厚なので麺への絡みを抑え目にしてあります。それにネギ。もうね、こってりなスープとの相性が抜群なわけですよ。そしてそれにあのトロケルチャーシューがドカン!ほらもう食べたくなってきた。
このお店はどうやらご夫婦で営業されてるようです。時間帯によって旦那さんか奥さんのどちらかが調理をしています。厨房が狭いので両方ということはないです。どちらか一方。俺がよく行く時間帯(夜)は奥さんが調理してることがほとんどです。気さくによく話しかけてくれます。顔も覚えてくれてるようです。名前も。

火曜日が『たけちゃん』。
このお店はね、この辺では多分老舗の部類に入ってるお店です。行列ができるというわけではないんやけど、いっつもお客さんが入っててそれが途切れることがない。そんな感じ。
俺の一押しは、「スタミナタンメン」。ザザッと炒めた野菜がたっぷり入ったタンメンです。タンメンなのでスープは具の野菜とトリガラスープの味が融合した、まあいわゆるタンメンな感じですが、それにすり鉢で粗く擂った白ゴマとニンニクが入るのがスタミナ的なんです。で、それがアツアツ。シャッキリ炒められた野菜もアツアツ。麺もアツアツ。スープもアツアツ。とにかくアツアツ。ほぼ確実に口の中がヤケドします。熱いですから。
お店の店長さんのオススメは「スタミナみそ」だそうです。たしかに多くのお客さんが「スタミナみそね!」と店に入りながら注文してる姿が多い感があります。
ラーメンの話なんで、今ここでどうのこうのいう話じゃないんですが、ラーメン以外も美味しい。俺が好きなのはチャーハン。これ、実はかなりの人気メニューのようです。ご飯がなくなってしまってて、注文できないことがよくある。それと餃子。野菜が強い餃子です。いずれにせよこのお店、とにかくアツアツ。そこんところが良い。
お店の店長さんは、「いらっしゃいっ!」とか「ありがとうございましたっ!」とかを必ず複数回言います。非常に職人的な感のある店長さんです。餃子を焼くのは店員さんの役目のようです。なので店員さんによって餃子の味が変わります。これは注意が必要。

水曜日は超大手有名ラーメン屋の支店。これに関しては書きません。あ、不味いとかそういうわけではないです。美味いんですけど、そんなのいろんな人がいろんなところでしゃべってたり書いてたりすることなので、別にいまさら俺がどうのこうの書かなくてもいいだろうということでパス。地元のラーメン屋じゃなかったりもするので。

木曜日は『ぴかまる』。
ここはわりと新しいお店です。醤油、みそと一通りそろってますがこのお店はとんこつに力をいれてます。最近流行の醤油とんこつとかそんなのではなく、ホンマに純粋な、みんながよく知ってるとんこつです。それだけにすごく安心して食べられます。
俺のオススメは豚唐とんこつ。豚唐とは、お店の言葉を借りると「良質な豚肉を秘伝のタレに一晩漬け込み唐揚げにしたもの」です。これがね、いやホンマ、言うだけのことはあるんです。しっかり味の付いた豚肉がカラッと揚がっててその食感がとんこつスープに浸っても失われない。気持ちの良い安心のとんこつスープと麺をすすり、そして豚唐をサクッといくわけです。そして別注のご飯をかっ込む。なんとなく流れができてます。ホッとするような。
店長さんはわりと若いお兄さん。ものすごく若いというわけではないですが、若い感じがする。俺の中では西八デビットと呼んでます。ベッカムではなく伊藤の方です。B−21スペシャルの。なんとなく似てるような。

で、日曜日。
確認の意味で『星のすみか』をもう一回。やっぱり俺はこの店が好きなんですな。とりあえず西八王子では一番美味しいです。まあ好みもあるとは思いますけどね。

最後に今回登場しなかった地元の美味しいラーメン屋『海友』を紹介します。
このお店のラーメンはいわゆる背脂チャッチャ系。チャーシューの醤油ダレが入ったとんこつスープで、いわゆるとんこつってわけじゃないですが、まあとんこつ系です。麺は細めのアレです。替玉があるアレ。チャーシューは脂少なめのロース。すごく生姜が効いてます。もうとにかく若者向けっちゅう感じの味です。八王子ラーメンというジャンルが確立されている八王子では非常に珍しい味。そういう味で勝負を挑む姿勢が大好き。
ここの店長はあきらかにサーフィンが大好きな若いお兄さんです。チャキチャキな感じでかっこいいお兄さん。ひょっとすると俺より若いのかもしれない。お店にはそのお友達やお知り合いと思われるいわゆるオニイサンがよく来てます。
今年の最初、店に車が突っ込んでずーっと改装中で、この夏にようやく復活したのに、10月頭ぐらいからずーっと<しばらく休みます>の張り紙がしてあります。はやく復活してほしいなあ。
12月上旬。ようやく復活しました。店長さん、体を壊されてたらしく、このほど復活となったそうです。よかったよかった。(平成15年12月14日追記。)

というわけで、地元西八王子のおさえとくべきラーメン屋を紹介してみました。この文章書くために、みんながどんな感じで書いてるか色々調べてみたんですが、いやあもう凄い。ラーメンの論評ってのは場合によってはそれだけで争いを生みます。ベタボメしてる人もいればボロクソにけなしてる人もいます。なかなか、絶対的評価は難しいです。西八の中で良い店という意味の、ある程度の相対的な評価として見ていただければ、この文章も意味があるかと思います。この界隈のラーメン屋は当然他にもあって、それらのお店も一度は味をチェックしていますので、それなりに信頼度はあると思ってます。
どの店も駅から近いですから、ラーメン好きの人はふらっとどうぞ。
『星のすみか(東京都 八王子市)』【半チャーシュー(醤油),ゴマみそネギチャーシュー】
『たけちゃん(東京都 八王子市)』【スタミナタンメン】
『ぴかまる(東京都 八王子市)』【豚唐とんこつ】
『海友(東京都 八王子市)』【ラーメン】
[平成15年11月2日(日)]




多摩ビール

根っからの阪神ファンである平田さんと巨人ファンの成川とアンチ巨人の俺とで、阪神リーグ優勝記念地ビール楽しもうかいを開催しました。
地ビールっちゅうぐらいですからその土地々々に根付くオリジナルのビールなわけですが、今回我々が楽しんだのは、多摩ビール(詳しくは参考URLをご覧ください)。多摩都市モノレールに揺られ、多摩ビールを飲ませるお店ビア倶楽部に向かったわけです。
やっぱりね、地ビールてもうその響きだけで美味いんです。とりあえず何をおいても出来たて、鮮度抜群なわけです。しかもその美味さが色々あります。黒生ビールに、ヴァイツェン、スーパーエール。詳しくはやはり参考URLなわけですが、このとき我々が飲んだのはその他あわせて計5種類ぐらいかな。季節によって異なるらしいのでそれだけでももうワクワクします。いつ行っても色んな味が楽しめるわけですから。
まあビールが美味いのはいわば当たり前です。不味けりゃ多摩ビールなんて謳ってないでしょうから。ビールが美味いのは当たり前。ビールをよりいっそう美味くしてくれるのが、ほらきた料理です。このお店はですね、料理も抜群です。ちょっとだけ値がはりますが、お通しからメインまでどれも美味しい。その季節の料理がちゃんと用意されてたりするところからも、料理に対するビールと同等のこだわりが感じられます。運よくミンク鯨の刺身を食べることができたりしました。ホンマにラッキー。
3人でだいたい4時間ぐらい飲み食いしてました。そりゃまあずいぶんと大金を支払いましたけど、何の気にもならないぐらい美味しい食でした。なんか当初の目的そっちのけで地ビールを純粋に楽しんだ夜でした。
ちなみに阪神がリーグ優勝したのは9月15日。つまりは阪神優勝の前日の出来事です。

阪神をリーグ優勝に導いた星野監督のお母様の命日が9月13日。知らなかったとはいえ、地ビールで浮かれてたのが心苦しくもあります。この食を書くべきか書かざるべきか、悩みました。しかし、食のひとつとして、美味しい地ビールを飲ませるお店を書かずにはいられませんでした。お許しください。ご冥福をお祈りします。
『ビア倶楽部(東京都 八王子市)』【地ビール】
[平成15年9月14日(日)]




そば(信州小諸編)

こと、“そば”について書くのは非常に緊張します。そばにこだわる人ってのはもうそりゃもう沢山いらっしゃいます。ザーッとググッて(グーグルで検索して)みりゃ、そりゃもうわんさかヒットします。それぐらいそばについて書いてる人ってのは多いわけです。そしてそれぞれ内容が濃い。素晴らしい。はっきり言うてかなわない。でもまあ、俺のような半価なそばっ食いも、微妙な違いこそわかりませんが、やっぱり美味いそばは美味いっちゅうことぐらいはわかります。なのでまあ、それを書くぐらいは良いだろうということで、書きます。

父親と二人で、我が祖母に手をあわせるために、祖母が眠る町、故郷信州は小諸に赴いたついでに、そばっ食いっちゅうのが今回の食。
はい、信州といえばご存知のとおり“そば”です。小諸もまた例外ではなく、良いおそば屋さんがあります。小諸を代表する観光スポット懐古園の草笛というおそば屋さんなんかは、割と有名らしいです。が、今回の食には出てきません。食うてないですから。

さて、まず一軒目が、『丁子庵』。このお店もまたとても有名なお店です。有名であるが故の残念さはありますが、まあ、言うまでもなく美味いですよ。ちゃんとお店の人が手打ちしてます。店に打ち場がありますから。そばのコシ、食感に関しては文句なしです。のどで味わえますよ。香りは時期的にちょっと微妙でしたが、この時期ならこれはまあしかたなし。満足です。

そして二軒目、『そば七』。ここは、いわゆる「そば通」をうならせる店ではないそうです。そば好きな人だけに来て欲しいお店だそうな。その辺が店長さんのこだわりなんでしょう。お店の営業日も土日だけっちゅうなんとも、もうけ度外視な感じです。
で、肝心のそばの味ですが、こちらももう文句なしです。コシも適度でのどの通りが良かったです。香りも良い感じでした。お茶うけで出してくれた、そばの揚げたのとか、付け合せの野沢菜の漬物とか、そういうのも良いです。お客としては嬉しい限り。ただそばを食べただけなのに、ものすごく満足できた。

どっちも美味いんですが、どちらかといえば『そば七』を推します。そばだけじゃなく、オプションがよかったので。
そんなんで評価するのがもう半価なそばっ食いの証拠なんですが、まあそれが良さということにしといてください。他にも食ってますが、それほどな店は書かないです。一応セレクションなわけです。
『そば蔵 丁子庵(長野県 小諸市 本町)』【そば】
『そば七 そばや七良右ヱ門(長野県 小諸市 本町)』【そば】
[平成15年8月30日(土)]




納得の味

「実家が神戸の方ですよね。」
久しぶりのその味に満たされた俺と弟に、おばちゃんは言いました。


八王子の古い小さな中華料理屋「小松亭」。この店もまた、その町では老舗に違いありません。八王子にはいくつかの「小松亭」が存在しています。他に少なくとも2軒は。しかしそれらのお店は、少し綺麗なんです。誰に確認をとったわけでもないんですが、それらはおそらく暖簾分けを受けた店だと思います。俺は、それらの総本山がその古い小さな中華料理屋「小松亭」だと確信しています。
確信の理由。それはもういうまでも無くその店の料理の味。その味がすべてを物語っています。
これまで多くの友達と、そして我が父や母、弟妹と、そのお店で食事をしました。そしてそのほとんどが、その店の味に満足しました。俺が好きであることを知らずにその店に誘った友達もいました。俺らのコミュニティがそうなんですから、他にもそんな風になっているコミュニティが存在してもおかしくはないですよね。まあ兎に角、みんなが納得してます。それぐらい“美味い”が広い店だということです。


以前住んでいたところからは近かったので行きつけていた感もあるんですが、今は電車を使う距離ほど離れてしまっているので、まあたまに行くかなという感じになってしまってます。美味くてもそれは仕方がないことです。物理的距離と精神的距離とは正比例なことが多いです。悲しいかな。進学で実家に帰ってしまった弟なんかはなおさらです。
そんなわけで、弟が夏休みを利用して上京してきたりしたら、まあ、「お前、折角こっち来たんやったら小松っとくか。」となるのも当然で、各々が一番好きなメニュー、茄子味噌炒めと酢豚を食しました。俺と弟と二人で来ると、ついついこの組み合わせが多くなってしまいます。
茄子味噌炒め。茄子に油でその美味さは激倍増。ピリ辛の肉味噌と油を吸った茄子とをしかもアツアツのを一緒に口に運ぶその嬉しさ。もう説明するのが恥ずかしいぐらい。
酢豚。揚げたての豚に甘酢餡が絡む。甘酢餡の香りの後に豚肉の香ばしさと歯ごたえ。当然アツアツ。嬉しい。そして同様に餡に絡むたまねぎやピーマン、にんじん、たけのこ。そしてパイナップル。それぞれがその皿に乗ることがまさしく必然。これもまた説明するのが恥ずかしいぐらい。
ね、嬉しいんですよ。みんなが納得しますよ。俺らもう二人で納得、満足。ふーっと満足。

納得することがもうひとつ。それはお店の人。おばちゃん、久しぶりに来た俺らのこと覚えてたんです。しかも実家が神戸にあるってことまで。ね、納得でしょう。嬉しいでしょう。

料理の補足。単品に200円でご飯とスープ、モヤシナムルが付きます。これもまた嬉しい。そして餃子、ここの焼き餃子は咬むと野菜の味が口に広がります。やさしい餃子です。あと、スタミナ炒め、肉野菜炒め、これらもオススメです。
『小松亭(東京都 八王子市)』【茄子味噌炒め,酢豚】
[平成15年8月19日(火)]




同じ味

多分、その町ではもう老舗である、中華料理のお店「十二間楼」。小学校三年の春、ということは今から16年ぐらい前やろうか、父親の転勤で神戸の町に引っ越してきたときにはもうすでにあった。どういうきっかけでそのお店に入ったのかはわからんけれども、しかしまあ、家族での外食の折に、当時の自宅に程近いそのお店に入ることは、ごく自然な成り行きなんやろう。
そのお店で俺が一番好きな一品が、“滑蛋牛肉飯(ワッタンガウヨハン)”。日本語で言い換えると、牛肉と玉子の餡かけ飯。初めて食ったのがいつやったのかは、もう覚えてないんやけど、でも、そのお店に行くたびに、必ず食ってたんやから、子供心に強烈に美味いものと認識してたんやろう。
8年ほど前、関東在住の関西人になるまでは、まあ年に数回は家族で食事に行っとったわけですが、なってしまってからは、さすがに足を運ぶこともなくなりました。たまに実家に帰っても、それはそれで家での食事がメインとなるわけですから、それもまあしかたの無いことです。そして、今回の里帰り。タイミングが悪いのかええのんか、母親の海外旅行などなどなどの偶然から、実家に帰ったものの、家におるのは父親と俺だけ。父親も俺も、炊事が嫌いな方ではないんやけれども、久しぶりやからということで、「十二間楼」に赴いたわけです。
例によって例のごとく、“滑蛋牛肉飯”。久しく食うてなかったわけですが、久しぶりに食うても、もう、美味い。少し甘めのいかにも中華な下ごしらえがなされた牛肉と、玉子がとろりと融合された、あっさり目の上湯スープ(だと思う)の餡。それがご飯にかかっているわけです。薬味は青ネギをパラリ。それをレンゲでガツガツ食う。
小学生のころ、いつも食うてたあの味です。そう、同じ味。

そうそう、いつもそれと一緒に餃子も食います。焼き餃子。これがまた美味い。少しちいさめの焼き餃子なので、一口で食える。で、かむとアツアツ。そしてガガーンと中から香るニンニク。ええんやわ、これが。
『十二間楼(神戸市 東灘区)』【滑蛋牛肉飯,焼き餃子】
[平成15年8月16日(土)]



食の記憶です。“いつでも美味しい”を重視して、しっかりしたものを残していきたいです。