漆黒の闇が、限りなく広がる。
1人の少女が寂しげな瞳をこちらになげかけている。
まるで助けを求めるような表情でこちらに何事かを訴えていたが、その声を聞く事はできなかった。
「君は?・・・いや、俺は君を知っている!君の名前は・・・」
― イライザ
電光のように意識によぎるその名が記憶の一部を蘇らせる。
「そうか!俺の名はカリスマ、そして君はイライザ!・・・俺は君を・・・」
無意識のうちに伸ばした手がイライザへ触れようとする正に瞬間、不気味な閃光がイライザを包み込み、彼女の姿を掻き消した。
次の瞬間、そこに在ったのは血のように赤い色をした巨大な蠍だった。
巨大な蠍は序々に収束し、やがて1人の男の姿をかたどる。
死人のように青白い肌に、冷酷そのものの冷たい瞳が異様に輝いていた。
― 闇の王
思わずそう彷彿とさせる威圧感がある。
禍々しい赤いオーラが、存在そのものに邪悪さを感じさせる。
その男の憎悪を込めた視線が、カリスマを貫く。
男は静かに掌をカリスマに向けると、何事かを呟いた。
その瞬間、背中に激痛が走りカリスマはその場に突っ伏した。
強烈に襲ってくる痛みの中、意識が遠のいてくる。
<・・・カリスマよ、この私を傷つけた男よ>
男は憎々そうに言葉を吐き出した。
<貴様には地獄の苦しみを与えやる>
憤怒の表情はやがて狂気へと変貌していく。
<悶え、苦しむがよかろう。そして、絶望の涙が枯れ果てたとき、闇に捧げてやろう>
<我が神の生贄としてな!我が・名・・アンタレス・・胸・・・刻む・・・よ・・い・・・>
声は次第に遠くなり、そして闇に消えた。
― アン・・タレス?・・・そう・だ・・我が・敵・・・イライ・・ザ・・・・を・・・
忘却編・第1話・・・完